「ウゴービで髪が抜けた」という話は前からありましたが、根拠を示すのは難しいことでした。今年7月、医学誌BMJにこの問いを正面から扱った研究が載りました。結論から言うと関連は確認され、ただし実際に経験する人は多くありません。
研究陣は2型糖尿病のある成人のうちGLP-1系の薬を新たに始めた人と別の系統の糖尿病薬を新たに始めた人に分け、その後に脱毛の診断を受ける割合を比較しました。
GLP-1系はウゴービ、オゼンピック、サクセンダなどが属するグループです。元は糖尿病の治療薬として出て、体重が減る効果から肥満治療にも使われるようになりました。
資料は米国ペンシルベニア大学病院の診療記録で、2019年1月から2024年9月の間に薬を初めて始めた人が対象です。二つの比較を合わせると5万人を超える規模です。
| 比較した二群 | 人数 |
|---|---|
| GLP-1系 vs SGLT-2阻害薬 | 12,004人 vs 15,221人 |
| GLP-1系 vs DPP-4阻害薬 | 11,964人 vs 11,238人 |
研究の方法は「標的試験模倣」と呼びます。薬を無作為に割り付ける本物の臨床試験はこの主題では行いにくいため、すでに蓄積された診療記録を臨床試験に近い構造に組み直して見る方法です。年齢や持病など結果に影響しうる条件は統計的に揃えて比較しました。
GLP-1系を使った側で脱毛の診断が多く見られました。数値は次のとおりです。
| 比較対象 | 脱毛全体 | 非瘢痕性脱毛 |
|---|---|---|
| SGLT-2阻害薬より | 1.37倍 (1.08–1.73) | 1.53倍 (1.18–1.97) |
| DPP-4阻害薬より | 1.68倍 (1.28–2.20) | 1.72倍 (1.28–2.31) |
括弧内の範囲は信頼区間といいます。同じ調査を何度も繰り返せば結果はおおむねこの範囲に入るという意味です。範囲の下端が1を超えれば偶然とは見なしにくいと判断します。上の4行はすべてその条件を満たしています。
「非瘢痕性脱毛」は毛包が破壊されない形を指します。原因がなくなれば再び生える可能性が残る側です。逆に瘢痕性脱毛は毛包の場所が瘢痕に置き換わり回復が難しくなります。今回関連が出たのは回復の可能性がある側でした。
論文の結論は二つの部分からなります。GLP-1系の使用が非瘢痕性脱毛のリスク増加と関連したというのが前半、絶対リスクは低いというのが後半です。
矛盾して見えますがそうではありません。元々まれに起こることは1.5倍になっても実際に経験する人数は大きく増えません。脱毛の診断がそれにあたります。倍率で見ると大きく、人数で見ると小さいのです。
研究陣もこの点を踏まえ、絶対リスクは低いが、こうした可能性を知っておけば治療を決めるときに役立つと結んでいます。
まず対象が2型糖尿病のある成人です。減量目的で使う人とは用量も期間も体の状態も違います。この結果をそのまま当てはめることはできません。
そして薬のせいなのか体重が減ったせいなのか区別されていません。急激な体重減少そのものが脱毛を招くことはすでに知られています。この設計では二つを分けられません。
研究費は米国国立衛生研究所から出ており、著者の一部が外部の顧問料と研究費を申告しています。
この結果だけで薬をやめる理由にはなりません。脱毛の診断は元々まれで、回復の可能性がある形で現れました。何より薬を中止するかは処方した医師と相談する問題です。
ただ髪が抜けることが気になるなら診察で伝えたほうがよいです。最近の体重の変化と服用中の薬を一緒に伝えると原因を絞るのに役立ちます。脱毛は原因によって対応が変わり、急激な体重減少による脱毛は体重が安定すれば回復する場合が多いです。
いいえ。この研究はGLP-1系を使った群で脱毛の診断が多かったことを示しています。個人が必ず経験するという意味ではなく、論文も絶対リスクは低いと述べています。
今回関連が出たのは非瘢痕性脱毛です。毛包が破壊されない形なので、原因が解消されれば再び生える可能性が残ります。
この設計では分けられません。急激な体重減少そのものが脱毛を招くことは知られています。
この研究だけを理由にする判断ではありません。処方した医師と、薬の利益と負担を合わせて考える問題です。