リテイニングリガメント(支持靭帯)フィラーで顔は上がるのか
「支持靭帯フィラーを打つと顔が引き上がる」「靭帯を強化してリフティングになる」とよく聞きます。実際の解剖構造とフィラーの作用を見るとフィラーは靭帯を引きません。
支持靭帯とは
支持靭帯は顔の皮膚と軟部組織を深部組織や骨格につなぐ線維性の構造物です。顔の組織が重力で流れ落ちないよう留める錨のような役割をします。

伸びているのは靭帯だけではありません
年齢とともに「支持靭帯が伸びる」と表現されます。実際には靭帯そのものより周囲の脂肪の萎縮、軟部組織の移動、骨格の変化のほうが大きな原因です。
ですから老化した顔を改善するときは、靭帯を引くのではなく全体の構造を調整し直す接近が必要です。
フィラーは引くのではなく受けるもの
支持靭帯フィラーと呼ばれる施術は多くが骨膜上のポイントを使います。頬骨、こめかみ、顎のライン側です。これらの位置が靭帯の付着点に近いため、フィラーを入れると軟部組織を間接的に支えることになります。
最も誤解されるのがここです。フィラーは空間を埋める物質です。靭帯を実際に引いたり強化するのではありません。柱を引き上げるというより、柱の下の受けを補強するのに近いです。
「支持靭帯にフィラーを入れる」より「支持靭帯の支持基盤を補強する」という表現のほうが正確です。

欧米の基準をそのまま当てはめてはいけません
この概念は欧米で先に発達しました。欧米人は一般に中顔面の前方突出が少なく、頬骨が相対的に低く、顔幅が狭い場合が多いです。そのため頬骨と側面の骨格を補強すると構造的な変化が比較的大きく現れます。
アジア人は事情が違います。もともと頬骨が発達し中顔面のボリュームも豊かな場合が多いです。同じ方式をそのまま当てはめると、リフティングより顔が広く見えたり重く見える結果になることがあります。
診療でも時々見ます。フィラーは確かに入りボリュームも増えたのに、むしろ顔が大きく見えると感じられる場合です。支持点を埋めることが常に良い結果につながるわけではありません。

原因が違えば接近も違います
支持靭帯そのものに執着するより、実際にどの部位が老化の原因なのかを分析するほうが先です。
- 中顔面の脂肪の下降が問題の場合
- 顎のラインの崩れが問題の場合
- ボリューム不足より過度な軟部組織の重さが問題の場合
同じ「たるんだ」という悩みでも原因が違えば接近が変わります。どこに埋めるかより、この顔で何が不足し何が過度なのかを先に見るのが順序です。
よくある質問
フィラーが靭帯を引き上げるのですか。
直接引くわけではありません。靭帯が付着する骨格部位にボリュームを補い、組織を間接的に支える方式です。引き上げるというより受けを補強してたるみを和らげる概念です。
普通のフィラーとは違う材料ですか。
材料自体は同じです。注入する位置が違います。支持靭帯が付着する骨格の地点に注入して構造的な支持を作ることが目的です。
なぜアジア人では顔が広く見えることがあるのですか。
もともと頬骨が発達し中顔面のボリュームが豊かな場合が多いためです。そうした顔に頬骨や側面のボリュームを足すと広く見える結果になりえます。
では受けないほうがよいのですか。
受けてはいけないのではなく、欧米の基準をそのまま従ってはいけないという意味です。骨格構造と老化の様相を総合して、どの部位が不足しどの部位が過度かを把握してから接近します。

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